全国に千五百社ある恵比寿神社

日本では御稲荷様、八幡様などの多様な神様が祭られている。数の多い神社を、表にして示しておこう。これをみると、七福神を祭る神社の数が少ないことがわかる。大国主命は日本神話の中の有力な神様だが、他の信仰を融合しない古い形をとる大国主命を祭神とする神社の数は、それほど多くない。金昆羅神社は大国主命信仰とインドの宮毘羅大将信仰が習合した信仰によってつくられた新しいもので、本来の大国主命信仰とは別のものである。

金昆羅神社が千九百社あるのを別にすれば、七福神関係の神社で群を抜いて多いのが千五百社ある恵比寿神社である。

漁民の夷信仰と西宮神社の布教

恵比寿様は七福神の中でただ一つの、日本古来の神であった。つまりのちに神仏習合でインドの神が日本の神様と結びつけられたものを除けば、恵比寿様だけが『古事記』などの日本神話の神となる。

日本の漁村には、漂着物を遠方から来た神様とみて、夷様として祭る習俗が広まっていた。恵比寿様が福の神とされると、このような夷様を祭った神社の多くが恵比寿神社になった。

古代豪族が日本神話の事代主命を祭っていた神社が、恵比寿神社と名を変えて福の神とされた例もある。さらに蛭子命を祭る西宮神社が、愧儡師を用いて広範囲に布教を行なったために、各地の商工民が恵比寿神社を建てた。こういった経緯によって恵比寿様が、日本人に最も身近な七福神となっていった。